カトリック文庫 講座開催報告
カトリック文庫講座「日本の教会建築史におけるアントニン・レーモンドの位置づけ―彼が残したものとその影響―」
2024年12月20日
2024年は、モダニズム建築を代表するひとりとして知られるアントニン・レーモンドの設計により、現キャンパスに南山大学の校舎が建設されて60年の節目にあたります。他方、レーモンドは、日本における教会建築の歴史を語るうえで避けては通れない、"分岐点"になった人物とも評されています。
これを機に、去る12⽉8⽇(日)、標題をテーマとして第9回となるカトリック⽂庫講座を開催しました。
講師には、建築史家としてレーモンドに造詣があり、教会を含む宗教施設についての著作もある、東北大学大学院工学研究科教授の五十嵐太郎氏をお迎えしました。
お話は、古代からモダニズムをたどり現代までの建築の歴史を概観することからはじまり、自然や置かれた環境を生かすレーモンド建築の特徴を踏まえつつ、他の建築家と比較しながら進められました。その建築全体の歴史のなかで、日本における教会建築史の流れに言及され、さまざまな教会を写真等で具体的に紹介しながら、レーモンドの位置づけと影響を解説していただきました。特にキャンパスに隣接する神言神学院・聖堂は、ある意味、レーモンド自身にとってのモダニズムを超える教会建築の到達点ではないか、との言葉が印象に残りました。
見える/見えない、言語化される/されない、専門家/非専門家、聖/俗、有用/無用、など相反するキーワードを手掛かりに、片や建築、片や哲学・倫理学の異なる専門家により縦横無尽に繰り広げられた対話は、汲めども尽きない泉のごとくことばが湧きあがり、圧倒されました。
難解なところもありましたが、お二人の化学反応の結果として、何かしら参加者それぞれの心に響くものがあったと思われます。建築の専門家ならではの解説に引き込まれ、これまで本学に縁がなかった方々は新鮮さをもって興味深く見聞きされていました。一方、本学の同窓生や現構成員は山里キャンパスに対するそれぞれの思い入れをもって参加したところ、知っているようで知らなかった新たな情報を得、驚きとともに親近感がより増したようです。
レーモンド建築を実際に見ながら詳細な説明を聴くという、なんとも贅沢で貴重な機会であり、参加者は皆、満足そうな表情をされていました。総じて、レーモンド・リノベーション・プロジェクトおよび図書館リニューアルを経た山里キャンパス60年の記念に相応しい、丸1日の有意義な企画となりました。